静岡文学史の背景と漫画家
ロシア文学はその冷徹な天候から、人間性を深く探求した作家が誕生したと謂われています。静岡は、山岳が多く海洋にも面しているので、平地では温暖湿潤ですが山岳地域では厳しい天候となります。先に挙げた若山牧水、川端康成、井上靖の引用からは、「南国ユートピア」のような印象を受け、読後感も爽やかです。特に井上靖の「しろばんば」や「あすなろ物語」は、そんな環境の中での人間成長を描写しています。
漫画家では、さくらももこの「漫画版・ひとりずもう」で、静岡で暮らす自身の姿を、やはり裏テーマとしての人間的成長を軸にして書いている、と謂えます。この作品は、「しろばんば」「あすなろ物語」のテーマを、漫画で昇華したとも謂えます。しかもさくらももこは「ギャグ漫画家」ですから、尚更その意義は深い、と謂えるでしょう。
しりあがり寿も静岡出身の漫画家です。しりあがり作品にある諦観は、静岡人の温厚な気質に潜む諦観が現れているのかも知れません。しりあがり作品の不条理表現は、何処かストイックさに欠けた印象を受けますが、それが味になっているのもまた、静岡の温暖湿潤な天候が影響しているのかも知れません。
参考文献
静岡県と作家たち 静岡近代文学研究会編 静岡新聞社発行
週刊スピリッツ連載中 さくらももこ ひとりずもう
その他、さくらももことしりあがり寿の著作群、インタビュー・評論も含む